日別アーカイブ: 2020年8月11日

天神中央公園 2

前回の記事 天神中央公園1

その2をアップするのが遅くなりました。その1の続きです。西中洲側、旧福岡県公会堂貴賓館についてアップします。

アクロス福岡のすぐ東側に、薬院新川が流れています。そばには橋が架かっており、この橋を渡って正面の西中洲大通りを渡れば、東側(西中洲側)のやや小さい公園に入ります。この公園には明治時代に建造された旧福岡県公会堂貴賓館(国重要文化財)が建っています。


橋を渡る 正面が西中洲側の公園


福岡県営天神中央公園 案内図

旧福岡県公会堂は貴賓館を備えた施設として1909年(明治41年)に建設されました。翌年1910年(明治42年)3月、第13回九州沖縄八県連合共進会の開催に伴い、貴賓館は来賓接待所として利用されました。その後、福岡県公会堂は1916年(大正5年)、大日本帝国陸軍の陸軍特別大演習の際には本営に指定され、のちの太平洋戦争の時代には福岡連隊区司令部と、軍事施設として使用されました。

終戦後の福岡県公会堂は、福岡高等裁判所(1948年~)、福岡県立筑紫中央高等学校・水産課程(1953年~)、福岡県農林事務所(1955年~)と転用され、その後は長らく福岡県教育委員会庁舎(1956年~1981年)として利用されました。

1981年(昭和56年)、福岡県庁は博多区東公園へ移転、福岡県公会堂も取り壊しが決定されました。跡地は「県営天神中央公園」 として整備されるためです。しかし、旧公会堂のうち「貴賓館」部分のみ、希少なフレンチルネサンス様式の木造建築物のため保存が決定されました。1984年(昭和59年)5月、旧福岡県公会堂貴賓館は「国指定重要文化財」に指定されました。


旧福岡県公会堂貴賓館 正面


旧福岡県公会堂貴賓館 解説板


外観 正面の右側


外観 正面


外観 正面の左側 ベランダおよびトイレ(左)


館内は入場ができるので、早速入ってみました。入館料は200円でした。ただし、コロナウイルスが蔓延しているため、受付で氏名と連絡先の記載を求められました。入館券と一緒にカフェの割引券をもらいました。

館内の写真撮影は許可制ですが、これは業者等が営利目的での撮影に限られるようです。個人が撮影する分には自由に撮影できます。


入館料を払い、チケットとカフェの割引券を受け取ると、スリッパに履き替えます。外気温は30度を超えています。係員さんが「右奥にある遊戯室で館内の紹介ビデオを見ながら涼しんでください」と声をかけてくださいました。【遊戯室】に入り、大画面モニターのスイッチを押すと、映像が再生されました。遊戯室には貴賓館の説明パネルが数基設置され、出入口付近には売店がありました。


1階【遊戯室】

ビデオが終わり、汗も引いたため、遊戯室を出ました。遊戯室正面左の【休憩室】に入りました。ここでは福岡県公会堂の模型や、かつて建材として使用された金具などが公開されていました。


1階【休憩室】

遊戯室および休憩室を出てすぐ西側には階段があります。勾配が急なため、足元に気を付けて階段を上がります。


1階 西側の階段

階段を上がった左手に【西寝室】があります。西寝室の暖炉の左手の小部屋が【西化粧室】です。寝室といってもベッドはなく、テーブルと明治期のドレス(おそらくは複製品)が置いてあります。当時の上流階級の女性たちは洋装をしてダンスを楽しんでいたのでしょうか。


2階【西寝室】


2階【西寝室】 レンタルドレス


2階【西寝室】 照明器具


2階【西化粧室】 パニエ

西側の階段の右手には【食堂】があります。食卓や椅子はおいてありません。壁側にイーゼルが3脚あり、キャンバスは部屋の壁紙のようでした。食堂の床は「綾筋張り」、天井は「亜鉛鉄板張り」です。


2階【食堂】


2階【食堂】 イーゼル


2階【広間】 左奥(西側)より 西の階段、西寝室、配膳室、物置のドア

2階の中心部に位置するホールは【広間】とよばれます。広間の北側は【運動場】とよばれるポーチがあります。決して広いスペースではないため、せいぜいストレッチやラジオ体操ぐらいの軽い運動しかできなさそうです。広間の南側に大きな階段があります。2階から途中の踊り場までは広い階段が、踊り場から1階にかけては階段が左右に分かれています。


2階【広間】 北方向 左は物置のドア、正面奥は運動場(ポーチ)へのドア、右は東化粧室の上げ下げ窓


2階【広間】 上の画像の対面側 階段

広間から東に進むと、右手に【便所】があります。入ってすぐに便器があり、中ほどに手洗器と脱衣所、その奥に洋風のバスタブがあります。便器もバスタブも見た感じでは明治時代当時のものではなさそうでした(便器はTOTOマーク付き)。ふと思ったのは、当時、お湯はどこで沸かしていたのか、ということ。1階で沸かしたお湯を2階まで運ぶのは現実的ではないので、2階のどこかでお湯を沸かして、それをバスタブまで運んだのでしょうか?Oo。(´~`)…。便所の左の部屋は【談話室】です。こちらも落ち着いた上品な部屋です。


2階【談話室】


2階【談話室】

広間から同じく東に進んだ左側は、手前に【東寝室】があります。室内に入った左手にドアがあり、その奥は【東化粧室】となっています。その奥にはおそらくは2階ではメインの【貴賓室】があります。貴賓室の奥には、丸い小部屋があります。外から見て左側の八角塔屋の部分にあたります。窓から見える明治・大正時代の福博の街並みはどんなものだったでしょうか。


2階【東寝室】 奥のドアから貴賓室へも入れる


2階【東寝室】 左は貴賓室 右は便所・浴室方面


2階【貴賓室】


2階【貴賓室】


2階【貴賓室】 奥の小部屋 八角塔屋の部分

中央の階段を下ります。階段の奥にまとめて【洗面所】【和風風呂】【洋風風呂】【便所】が展示されています。ここでトイレ用のスリッパに履き替えて見学しました。洋風風呂にはバスタブが置かれていましたが、こちらもおそらくは後世(昭和~平成?)のバスタブのようでした。一方、和風風呂は石づくりでした。

因みに、入館者用のトイレは、便所等の施設の左手に進んだところにあります。トイレ用のスリッパはこちらで使うものだったかもしれません…(*'ω'*)。


2階の広間(ホール)から踊り場に下りたところ


1階【広間】 展示用の便所等および入館者用のトイレはこの中央階段の奥に位置する


1階【広間】 画像奥は玄関

一通り見て回ったので、カフェで紅茶をいただきました。【電話室】とされている部屋で注文と会計を済ませ、出来上がった品を【食堂】へ持ってゆきます。2階の食堂は飲食スペースではありませんが、ここ1階の食堂では飲食ができます。1階で最もメインの部屋らしく、とても重厚な雰囲気です。2階の貴賓室および東寝室の真下になります。画像には写っていませんが、わたしのほかにも数組の女性客の姿がありました。以前は、東側のベランダでも食事ができたようですが、現在はコロナウイルスの影響かベランダでは食事はできないようです。


1階【食堂】 カフェとして利用されている


1階【食堂】 テーブルの飾り花


1階【食堂】 アイスティーをいただきました


福岡県のマーク

1世紀前の明治時代後期のレトロな感覚に浸りながら、ゆっくりした時間を過ごせました。コロナウイルスが収束して、ベランダでの食事が再開された折には、もう一度出かけたいものです。

公式サイト 旧福岡県公会堂貴賓館